Story Vol.5 時代と共に進化、より住みやすく
湾岸の歴史とこれから(前編)

住宅を建設しようにも適地が少なくなっている都心に比べ、今も住宅建設が活況を呈しているのが湾岸エリア。東京五輪選手村の民間住宅への転用も含めて考えると、今後まだ数年はタワーマンションが続々誕生することになります。その湾岸エリアには複数の街があり、実はそれぞれに利便性、環境などに違いがあることをご存じでしょうか?
ここで一度、湾岸エリアのこれまでを振り返り、街の個性を見ていきましょう。

湾岸エリアの賃貸住宅は大半が高層階に位置しており、共用部はもちろん、室内からも眺望が楽しめる
写真は2つのスパを備えたDEUX TOURS CANAL&SPA

より都心近くへと進む湾岸開発

一般に宅地開発は年を追うごとに駅から遠くなり、足回り、買い物などの利便性が落ちていくものです。面白いことに湾岸エリアではそれとは逆に、都心に近い内側へ、内側へと開発が進んでいます。1990年前後に最初に開発されたのは都心に近い、大川端リバーシティを中心とした佃、続いて月島でしたが、その後は一番外側に当たる東雲・有明、次いでより都心に近い豊洲、そして近年活発に建設が進んでいるのは晴海、勝どきという、銀座から歩いて行ける地域です。

もちろん、例外もありますが、開発年が新しくなるほど都心に近づき、利便性もアップするのが湾岸エリアの他とは異なるところ。そして、人気の高まりとともに、住宅価格、賃料もアップしています。

「賃料そのもので見ると、広い物件が多いため、自由が丘・吉祥寺のほうが高いように見えますが、坪(3.3m2)単価で見ると湾岸エリアのほうが圧倒的に高値で取引されています。自由が丘・吉祥寺は1万円を切っていますが、湾岸は1万2000円以上。若い人、子育て世代がどんどん増え、活況を呈しているのが特徴です。現在、中央区は23区中、65歳以上の割合がもっとも低くなっているほどです」(ケン・コーポレーション湾岸支店支店長・田邊高明氏)

人口増を受け、湾岸エリアの街はどこもますます住みやすくなっています。たとえば、10年前は商業施設不足が指摘されていた勝どきですが、現在スーパーが3店舗あり、駅にほど近い月島第二児童公園では毎月第2週の週末、日本最大規模といわれるマルシェが開かれるほど。買い物に困るどころか、身近で生産者から直接買い物できるまでになっているのです。

そうした全体的な傾向とは別に、もうひとつ面白いのは湾岸という限定されたエリアの中だけでも選択肢が豊富だという点。

「知らない人は湾岸と一口にまとめてしまいがちですが、豊洲と勝どきは隣り合っていても両方を比べて選ぶ人はいませんし、古くから開発されていても佃と東雲の雰囲気は180度違うといってよいほど。個性がはっきりしています」(前出・田邊氏)

以降、湾岸エリアの6地域を外側から都心に向かって順に見ていきましょう。

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湾岸エリアの各街区、東京五輪の競技会場、選手村などの位置関係をまとめた概念図。湾岸と一口で言っても広い範囲であることが分かる

【東雲・有明】

早くに開発された、共有部の充実した物件が豊富

東雲の中心となっている東雲キャナルコートは元々三菱製鋼の工場跡地。2000年から都市再生機構、三菱グループなどが再開発を行ったもので、2005年にグッドデザイン賞金賞を受賞した、デザイン性の高い街並みが印象的なエリアです。

「開発からかなり時間が経っていることもあり、このエリアの物件価格は新築時からすると120~130%アップしてはいるものの、それでも他エリアよりはお手頃。賃貸でも他のエリアより2割程度は安くなっています。その手頃さに加え、東京メトロ有楽町線辰巳駅、りんかい線東雲駅、場所によっては有楽町線豊洲駅も利用できることなどもあり、長く住んでいる人が多い街です」(前出・田邊氏)

東雲より新しく、2009年以降に開発が進んだのは有明。りんかい線の国際展示場駅、ゆりかもめ線有明駅が利用でき、バス便利用者も多く、転勤者に人気とか。

「足回りがそれほど便利というわけではありませんが、共有部の充実した大型物件が中心で、建物内で生活が楽しめる点が特徴。ゆったりした区画が広がる地域で、賃料、住宅価格も比較的手頃です」(前出・田邊氏)

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東雲キャナルコートには大型商業施設、子育て支援施設など多様な施設が揃っており、新しく建てられたタワーなども(上:2010年撮影、下:2012年撮影)

【豊洲】

女性・子どもに住みやすい、いまや人気の街のひとつに

2003年から道路、公園などの基盤整備が始まり、2006年に街びらきをした豊洲。実際に住宅が供給され始めたのは2007年くらいですが、いまや、湾岸屈指の街のひとつとして、特に女性人気を集めています。公園、大型商業施設など生活に必要な施設が揃っていることに加え、安全、多様性に配慮した街づくりが行われていることが人気の要因でしょう。利用できるのは東京メトロ有楽町線・ゆりかもめ線の豊洲駅です。
「最近は学習塾なども増え、子育て環境はますます充実。子どものいる家庭にはより住みやすくなっています。当初計画されていた開発はすべて終了しており、今後の成熟が楽しみです」(前出・田邊氏)

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住宅だけではなく、オフィスや大規模商業施設、学校、公園などが整備され、住みやすさで評価される豊洲(2016年撮影)

【晴海】

今後も物件は続々。オリンピック後も楽しみ

その昔の団地建替えで誕生した晴海アイランドトリトンスクエアを除けば、2009年以降の物件が多い晴海エリア。現在も建設が進んでいる物件もあり、湾岸エリアでは勝どきと並び、今後も大きく変化する場所といえそうです。最寄り駅は都営大江戸線勝どき駅ですが、銀座辺りまでなら十分徒歩圏。自転車、バスを利用する人も少なくありません。
「東京五輪の選手村ができる予定でもあり、これから数年後、今とは全く違う街になっていることが期待できます」(前出・田邊氏)

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他エリアと比べると、まだまだ使われていない土地も多く、今後の発展が楽しみな晴海エリア(2016年撮影)

【勝どき】

銀座徒歩圏。今後も供給増の期待地域

晴海よりさらに内側、勝鬨橋を渡れば築地という場所に位置するのが勝どき。都心に近い割には長らく開発されてこなかったものの、2008年以降ラッシュと言っても良いほどのタワーマンション建設が始まり、今に続いています。前述したように住宅増加に連れて商業施設も増え、子どもの姿を見ることも増えました。
「24時間営業のスーパーには夜中でも行列ができていますし、出店希望者も多いのですが、スペースが無いため、なかなか、店が増えないのが残念なところです」(前出・田邊氏)

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築地から勝鬨橋を渡ったところが勝どき。最近はこの橋を自転車で行き来する人も増え、居住者が増えていることが感じられる(2012年撮影)

【佃・月島】

歴史も楽しめる、長く人気の続いているエリア

新しく整備された街が中心の湾岸エリアで唯一、下町らしさが残るのが佃・月島エリア。佃は徳川家康が摂津国佃村(現在の大阪市西淀川区佃町)から連れてきた漁師たちに与えられた地で、佃煮が生まれた場所。その後、石川島播磨重工業(現・IHI)の工場となり、1990年前後から再開発が進みました。
続いて工場労働者の街だった月島にも開発が及び、東京メトロ有楽町線月島駅周辺にタワーマンションが林立するように。そして、月島といえば、多くの人がご存じのB級グルメ中でも屈指の知名度を誇るもんじゃ焼きの街。最近は観光地としても賑わっています。
「湾岸にありながら、路地、神社、祭りの残るエリアで、歴史と利便性の両方が味わえるのが魅力。その希少性のためでしょう、開発当初から人気は落ちておらず、今も高値安定です」(前出・田邊氏)

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勝どきから佃、月島方向を見たところ。路地や神社など古いものとタワーが都心近くに併存しているのは珍しい(2012年撮影)

【芝浦】

港区立地、山手線田町駅最寄りが高評価の理由

湾岸エリアは3つの区にまたがっています。東雲・有明、豊洲は江東区、晴海、佃・月島、勝どきは中央区、そして芝浦は港区なのですが、立地として人気が高いのは芝浦。最寄駅が山手線田町である点も評価されており、この10年住宅価格は上昇の一途。特に2~3年前には都心同様に値上がり、この1~2年は都心と変わらない状態とか。
芝浦アイランド」の開発から10年。そのあと2015年に近隣に1棟できたものの、このエリアではタワーマンションが増えていないため、既存の物件の競争力が落ちていません。言ってみれば一人勝ち状態で、人気がキープされています」(前出・田邊氏)

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運河沿いの整備も進み、夜景を楽しみながら散歩する人に姿も見られるようにあった芝浦アイランド周辺(2017年撮影)

ここまで、各エリアの概況を見てきましたが、湾岸エリアではまだまだ変化が続いています。
後編では、今後の開発予定や話題を見ていきます。

【文・構成】中川 寛子 HIROKO NAKAGAWA

借りる、買う、貸す、建てるなど、住まいに関する雑誌、書籍、インターネットなどの編集に携わること20数年。長らく表参道に暮らし、都心居住の快適さを身をもって実感している。All About「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。

住宅賃貸仲介のスペシャリスト
田邊高明 TAKAAKI TANABE
【自己PR】

日々進化し続ける湾岸エリアを網羅しKENの優良物件をご紹介致します。
営業員全員でお客様がご満足いただける物件とおもてなしを提供致します。

  • ■趣味:釣り・野球・ゴルフ
  • ■出身:習志野市
  • ■資格:宅地建物取引士・相続診断士

掲載中の物件名・プロジェクト名・駅名・社員の所属などの情報は2017年4月現在のものです。