Story Vol.11 地域のポテンシャルにいち早く着目。
吉祥寺支店の先進性を聞く

1972年に港区で創業したケン・コーポレーションがそれから13年後に最初に支店を出したのが吉祥寺です。今でこそ、長年に渡って選ばれ続ける首都圏有数の人気のまちですが、その当時はそこまで認知度のあるまちではなかったはず。しかし、港区から渋谷区、目黒区、世田谷区と取り扱い範囲を広げる中でポテンシャルを感じたのが吉祥寺を中心とする杉並区、武蔵野市エリアでした。数十年に渡り高級不動産会社の拠点として重視されてきたこのエリアの魅力・先進性について、吉祥寺エリアに詳しい営業員に聞きました。

JR吉祥寺駅北口に所在する吉祥寺支店。お客様が気軽に訪れられる様、広いスペースを確保している。

広さ、環境に独自の文化、立地に可能性

吉祥寺支店開設の理由として、都心から吉祥寺までを車で移動すると多少時間はかかり、渋滞にかかることもあるものの「広さと住環境を求める外国人、VIP層にはニーズがある」と当時の経営陣が判断、そうした人たち向けに賃貸物件を作ることになったそうです。(談・川村執行役員)

2000年台には支店長として吉祥寺エリアに関わってきた川村。地域の高級住宅市況について深い知見がある。

このエリアには都心にはない武蔵野の面影を思わせる緑の多い静かな住環境、文化人が多く居住してきた地域独自の文化など、魅力的な素地が昔からあります。また、調布にアメリカン・スクール・イン・ジャパン、世田谷区瀬田にセント・メリーズ・インターナショナル・スクールなど、周辺に外国人子女を受け入れる学校があることにより、当時からKENの中核事業であった外国人向け高級賃貸のニーズも見込めました。そこで、地元の土地所有者に働きかけ、まとまった敷地の中にそれまでにない広さ、設備を備えた2×4の大型住宅が複数棟立つような物件を作り始めたのが吉祥寺支店のスタートとなりました。

その目論見は見事的中します。インターナショナルスクールに子弟を通わす家庭はもちろん、各校の先生方や外資系企業の幹部の人たちが多少の距離はものともせず、広さと住環境、外国人、富裕層のニーズに合致した設備等の住み心地を求めて引っ越してきたのです。賃貸住宅と言えばコンパクトな単身者向きアパートばかりだったこの地域に新たな市場が開かれたのです。今も、その当時に建てられた住宅は健在。吉祥寺東町周辺やお屋敷街として知られる御殿山、非常に早い時期に区画整理が行われ、整然とした街並みで知られる杉並区宮前などに点在、広さと環境、しっかりとした作りを求める人たちに選ばれ続けています。

井の頭公園に代表される良好な環境がエリアの特徴。住みたい街として人気が高いのもうなずける。

吉祥寺支店は90年代からずっとJR吉祥寺駅前に店舗を構えており、杉並区と三鷹市・武蔵野市を中心に 賃貸・売買を取り扱っている。

コンセプト、美意識のある賃貸物件も多数登場

外国人やVIP向けの住宅に加え、この地域に特徴的なのはコンセプトのある美意識に満ちた賃貸物件が多いということ。これは歴史的、文化的な背景によるのでしょう。趣味、教養レベルの高い土地所有者が多く、多少採算を度外視しても「良いもの」を建てようという意識が賃貸不動産オーナーにあるのだそうです。

「たとえば、久我山駅から徒歩2分と便利な場所になる『メナハウス久我山』はアジアのリゾートホテルを思わせるような中庭、テラコッタタイルの廊下が印象的ですし、アーティストのために作られた『S-CORRIDOR(エスコリドー)』(上北沢)はまるで美術館のような佇まい。夜間の美しさは特筆ものです。『Refuge O Forest N(リフュージュ・オー・フォレスト)』(永福町)は窓、バルコニーの作りが個性的でモダン。広大な敷地にスポーツジムもある『宮前ヴィレッジ』(富士見ヶ丘)は他にない開放感があるなど、それぞれに魅力的です。こうした個性的で高額な物件を作っても借主に選ばれる土地柄も大きなポイントでしょう」(不破)。

メナハウス久我山】 アジアンリゾートをイメージ。南欧風を漂わせるパティオと美しいファザードが特徴。

S-CORRIDOR】 美術館のような外観とコンクリート打ちっぱなしの室内仕様。

宮前ヴィレッジ】 広大な敷地に豊かな植樹。デザイン性と居住性を両立させたヴィンテージ物件。

ニーズはあるものの、大型物件の供給は減少傾向に

ただ、最近ではリスクが敬遠されてか、広さや個性のある賃貸住宅を建てようとする土地所有者が少なくなっています。現在、中心となっている物件はファミリー向け・70m²前後の3LDKマンションやワンルームマンションなど。80m²超のマンション、100m²超の一戸建てなど広さを求めてこのエリアで物件を探すニーズはあるのに、建てようとする人が少ないのはもったいないと支店長の鈴木氏は指摘します。

「確かにこの10年ほどで高井戸にあったヒューレット・パッカード社が撤退、インターナショナルスクールのスクールバスが一般化して都心部のスクールバス停留所周辺(麻布・代々木上原など)に住まいのニーズが変化するなど、このエリアでの外国人高級賃貸市場は縮退しています。しかし、100m²超の一戸建てなど広い物件を探している日本人富裕層の方は実は多くいらっしゃるのです。例を挙げると、市場に築年数の浅い物件がないなか、2019年3月に世田谷区経堂に誕生した100~120m²のテラスハウスは竣工前に5戸中4戸が決まり、4月には満室に。確実にニーズはあるので、現在土地活用をお考えの方にはぜひ広めの賃貸住宅の建設を検討いただければと思っています」(鈴木)。

「広い物件を求めるお客様のニーズは顕著なので、そのニーズを捉えた不動産企画には大きなチャンスがある」と鈴木支店長。

購入したい物件ナンバーワンはパークシティ浜田山

賃貸の話が続きましたが、もうひとつの市場、売買についても触れておきましょう。吉祥寺支店での売買はマンション、戸建てが半々。まず、マンションで人気が高いのは京王井の頭線浜田山にある『パークシティ浜田山』です。2009年に分譲が始まった時にも大きな話題になりましたが、広大な敷地に100m²超も多く、180m²などという一般のマンションにはないような部屋も。

「港区を除き、ここしばらく広い物件が無かったこともあり、このエリアでマンション購入を検討する方は必ず候補に挙げる物件です。賃貸でも広めの物件を探す人が少なくないという話をしましたが、売買でも90~100m²以上のマンションを探している方が多いのです。価格は坪単価で330~420万円。一昔前の都心並みの価格になっています」(鈴木)。

三井グラウンド跡地に建てられた『パークシティ浜田山』A棟のエントランス。公園に住まうような豊かな建築思想で設計されている。

他の住宅売買取引の特徴としては、最近建てられている駅直結のタワーマンションに人気が集まっているとのこと。坪単価でみてみると、新築時の分譲価格はグレーシアタワー三鷹(三鷹市)は平均442万円前後、シティタワー国分寺ザ・ツイン(国分寺)は平均387万円~、プラウドタワー立川(立川市)は平均343万円~などなど。中央区・江東区の湾岸部などに比べても遜色ない価格となっており、人気ぶりが分かります。
それを反映して、こうした物件を借りる場合の賃料も高めになっており、たとえば上記のマンションですと三鷹で1万6000~8000円、国分寺で1万1000~4000円、立川で1万1000~5000円など。分譲価格はエリア全体でかなり強含みですが、賃貸になると駅による差が出てくるようです。

また、一戸建ても地域によって強弱があるとのこと。「吉祥寺周辺でも練馬区に近い吉祥寺北町はやや弱く、吉祥寺本町、吉祥寺南町になるとぐっと強くなります。特に南町一丁目の井の頭公園に近い地域はお屋敷街として知られる田園調布3丁目よりも狭い地域で希少価値が高く、坪単価で350万円~。それでも売り物件が出るとすぐに決まる人気ぶりです」(鈴木)。

良い物件を建てれば高値でも売れる地域

一戸建てでは地域によって価格に高低が出るというわけですが、それを企画が凌駕することもあります。好例が2015年に吉祥寺支店が企画に携わった『ザ・井の頭公園テラス』。

この土地は井の頭公園駅から徒歩4分、全体で1000坪ほどの土地で元々は土地だけで販売されていました。2年間ほど一区画100坪以上に分割して販売されていたものの、なぜか大幅に苦戦。そこで、吉祥寺支店が売主に「一戸建てを建設して建売分譲する」ことを提案。道路を入れて一画あたり40坪前後、23区画の分譲地にして販売をしたところ、竣工から半年もかからず完売したというものです。

しかし、同地の住所は三鷹市井の頭。この地でこれまで1.2憶円を超える新築分譲住宅は殆ど出たことがなく、当初は絶対に無理と言う声もあったほど。ところが、8000万円後半から1億2000万円以上という価格帯にも関わらず人気を呼んだのです。

その理由はプランニングにありました。「全体をひとつのまちに見立て景観に配慮した宅地を作ったのです。中央にクルドサック(末端をサークル状にした袋小路の道路)を設け、シンボルツリーを植え、三鷹市初の電柱地中化を行い、 低めの積石で隣地境界を設けるセミオープン式のランドスケープとする等、 いろいろな工夫を施しました。住戸内でもキッチン、バスなど最上級の設備を入れました。結果、半数の地元からの問合せに加え、横浜その他全国各地からの問合せをいただきました。実際に購入されたのは医師、弁護士、企業の経営者などの富裕層。吉祥寺支店オープン以降、外国人向け高級賃貸をベースとし富裕層向けに培ってきたノウハウが生きた例です」(村岡)。

竣工当時の『ザ・井の頭公園テラス』の写真。中央にクルドサックが置かれた豊かなプランニングを実現した。

これからの吉祥寺支店が目指すもの

さて、その吉祥寺支店では京王井の頭線沿線、中央線沿線や隣接する世田谷区成城など幅広い地域のニーズの高まりに対応するため、2018年11月にオフィスをリニューアルしています。今後、力を入れたい部分について伺いました。

ひとつはリノベーション。ケン・コーポレーション グループ内に、住宅はもちろんホテルや旅館、オフィスなど幅広い施工実績を持つリノベーション会社(株式会社禅)があり、外国人や富裕層向けの改装は得意中の得意としています。キッチンの設備仕様ひとつで物件が決まると言いますから、そうした層向けに不動産経営をするのであれば知恵を借りて損はないはずです。特に吉祥寺エリアでは築年数の経った大型一戸建てなどが賃貸物件としてあり、手を入れれば家賃アップはおおいに期待できるとのことです。

仲介以前の相談業務もポイント。

「KENは仲介のイメージが強いせいか、オーナー様から物件が完成してから募集の相談をいただくケースが多いのですが、大事なのはどんな物件を作られるかを事前にご共有いただくことです。」(不破)。

高級賃貸住宅の設計では、例えば家具のレイアウトの基本や富裕層の車サイズ(大型・ハイルーフ)を考慮し忘れるなど、建築家や工務店だけでは気づきにくいポイントがあります。これらは多くの場合、改善が実施しにくい部分。しかし、普段から高級賃貸を探しているお客様と接しているKENの営業員なら簡単に気付けるそうです。

「よい物件企画」の為にオーナーの力になりたい、と語る不破。

「思い入れを持って賃貸物件を建てるオーナー様にデザインだけでなく、高級賃貸としての収益性とマーケットニーズを踏まえたアドバイスを差し上げられます。 『こんな物件を建てたい』と決める企画段階で、建築家・工務店とあわせてご相談いただければと考えております。」

ケン・コーポレーションではその土地にあった企画をオーダーメイドでご提案する企画部があり、その実績も多彩。活用によりさらに良い賃貸物件が建てられるとのことです。

また、今後注目している地域は駅前が大きく変わる中央線の中野駅。すでに警察大学校等の空地に広大な公園、オフィスビル、大学キャンパスなどが誕生、変わってきた中野ですが、今後、区役所の移転・新築、中野サンプラザの建替えなどが予定されており、まだまだ変わりそうなのです。

もうひとつ、吉祥寺エリアでは駅からバス10分という立地で大規模マンションが建設中で販売も好調。吉祥寺駅は各方面へのバス便が多数発着し、バス便利用エリアが広範に渡りますが、これによってバス便のイメージがどうなるか。イメージが変わる、バス便も選択されるようになれば、商業施設が多く、駅周辺に住宅適地の少ないこのエリアにとっては福音。市場が変わるかもしれません。

実は、いままで吉祥寺支店に所属した営業員の多くが、現在もKENの各部門で活躍しており、吉祥寺エリアへの思い入れが深い社員が多いとのこと。1985年以来、この土地で新たな市場を切り開き、広げてきた実績が次の時代にどう生きるか、楽しみなところです。

インタビューに答えていただいた4人。村岡は2019年5月現在は別の支店に在籍中ですが、「吉祥寺エリアのことなら私が是非。」と参加いたしました。

川村秀二 SHUJI KAWAMURA
【自己PR】
  • ■趣味:カラオケ
  • ■出身:仙台市
  • ■資格:宅地建物取引士、相続診断士
売買仲介のスペシャリスト
鈴木稔 MINORU SUZUKI
【自己PR】

業界歴25年以上。東北出身の為、悪い事の出来ない性格です。安心してご依頼ください

  • ■趣味:手品(ご希望があればお見せします)格闘技観戦
  • ■出身:青森県八戸市
  • ■資格:宅地建物取引士
【文・構成】中川 寛子 HIROKO NAKAGAWA

借りる、買う、貸す、建てるなど、住まいに関する雑誌、書籍、インターネットなどの編集に携わること20数年。長らく表参道に暮らし、都心居住の快適さを身をもって実感している。All About「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。

掲載中の物件名・プロジェクト名・駅名・社員の所属などの情報は2019年5月現在のものです。

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