Story Vol.22 管理もホスピタリティ最優先
オーナー様、入居者様に寄り添う対応が強み
「住宅運営管理部」

本部長  田邊 高明氏

KENの管理物件「The Manor Nishi-Azabu」

長期に及ぶ不動産経営では、物件の価値を維持、向上させるために管理が大きな役割を果たします。ケン・コーポレーションでは住宅運営管理部(以下、管理部)が発足以来、営業と一体になって物件をお預かりし、管理してきました。ここでは物件価値の最大化に寄与する、他社ではほとんどみない管理と営業との連携体制などについてご紹介します。

また、最近は物件の老朽化が進む一方で、立地の優位性が築年数の差を上回るようになり、古くてもきちんと手が入っている物件では賃料大幅アップが見込めるなど市場は大きく変わっています。これからの時代の管理を考えるために必要な最新市場動向についても併せてお伝えします。

最大の特徴は管理と営業が情報を共有、
連携してひとつの物件に関わること

ケン・コーポレーションで住宅の管理にあたるセクションが誕生したのは1986年。当初は営業と兼務でしたが、その後に分離。今では部署は別れてはいるものの、物件ごとに管理担当、営業担当が1人ずつ付き、情報は常に共有、協働してひとつの物件に関わる仕組みになっています。

「管理と営業を同じ会社内で行っており、互いの仕事内容を知っている人間同士が協力、連携しているという点が、ケン・コーポレーションの管理が他社と大きく異なる点です。

同じように不動産に関わっていながらも、管理と営業では見ているものが違います。たとえば、営業は入居希望日を優先し、お客様の希望日に入居できるようにしたいと考えますが、内装工事が完了していなければ入居はできません。管理を他社に委託、あるいは別会社化しているような場合には、工事が完了しなければ入居はできませんと管理側から希望日の入居を拒否されることも。結果、入居が決まらないこともあり得ます。

それに対して私たちの場合は、なんとか工事を早められないか、入居日を変更できないかと管理、営業それぞれの立場で検討、互いに良いタイミングで入居できるようにしようと努力します。その結果、空室期間が短くなり、オーナー様はもちろん、入居者様にも喜ばれる結果を出しやすくなります。」と住宅運営管理部の田邊高明本部長。田邊さんは26年間に渡る営業部所属から管理部に異動、現職に。こうした部署間の人事交流も管理の質の向上、連携の緊密化に役立っています。

本部長  田邊 高明氏

住宅運営管理部 本部長 田邊 高明氏

「入居日と内装工事の例を出しましたが、他にも管理と営業の連携によるメリットはさまざまなところにあります。たとえば新築物件建設時には管理、営業が企画部と連携、それぞれの目線で提案、検討を行っていますが、これによってより高収益な物件にすることが可能になります。

営業からは最新の市場の動き、近隣事例の紹介、管理からはランニングコストの低減、修繕のしやすさを意識した提案が行われます。収益物件の場合、管理や修繕費用は計画に当たっての重要な要素。この設計では修繕しにくい、この設備ではランニングコストがかかると判明しても完成してからでは取り返しがつきません。そこで私たちは最初から社内で一緒に動くことでもっとも選ばれる、高収益な物件を目指しています。」

入居者の対応も間に人が入ると情報が薄まり、かつ時間がかかることになりますが、同じ社内の、それまで情報を共有してきた社員同士であればそのあたりもスムーズ。時間的ロスを生じさせることなく、情報が正しく伝えられます。それが入居者様の満足に繋がり、最終的にはオーナー様の経営に寄与することに。管理、営業の連携には大きな意味があるのです。

もうひとつ、ケン・コーポレーションにとっては、オーナー様も入居者様もどちらも直接のお客様であるという点も他社とは異なるところ。一般的な管理会社はオーナー様だけがお客様であることが多いからです。

「そのため、問題が起きた場合には、どちらか一方だけに良い解決ではなく、双方にご満足いただける解決を模索します。時には利害が相いれないこともあって苦労しますが、これはオーナー様のためになることです。入居者様が不満を抱えることになると早期の退去に繋がる、不評に繋がるなどオーナー様にもマイナス。満足してお住まいいただくことが長い目でオーナー様の賃貸経営を支えることになります。」

オーナー様向けパンフレット

※オーナー様向けパンフレット

画像はイメージです

※画像はイメージです

100人体制で約1万6,000戸を管理、
高額賃貸、外国人に豊富な実績と経験

管理部門は現在100人体制で東京・横浜を中心に約1万6,000戸を担当しています。吉祥寺、横浜では支店内に管理部門があり、それ以外は本社が管轄。大型物件では管理スタッフが現場に常駐していることもあります。

「管理を受託しているのは、仲介から管理まで一貫して手掛けている物件が中心で、中には管理部門ができて以来、ずっと管理を担当している例もあります。築年数が古い物件でも立地、建物が良ければ、あとはしっかり管理すれば決まります。物件次第ですが、1970年代など古い物件でも新規で受託することもあります。

また、入居時や退去時の現地確認は管理担当が必ず物件に行きます。担当者が自分の目でみることが重要で、オーナー様や入居者様へ直接きちんとご説明ができるように時間と手間を掛けてお預かりした物件を管理しています。これも高級物件を中心としたケン・コーポレーションの基本であり、一貫してそれをスタンダードとした管理体制で運営しています。」

冒頭に管理と営業の連携を他にない特徴として挙げましたが、それ以外にもいくつか追随を許さぬ強みがあります。たとえば高級住宅エリア、外国人向け高額住宅での豊富な実績がその例です。

「エリアを限定、高級賃貸に特化してきており、契約件数は年間平均4,500件。特に賃料30万円以上の契約は5割を超しており、高額になればなるほど強みが増します。

本部長  田邊 高明氏

そこと重なる部分でもありますが、外国人高額賃貸にも強みがあります。外資系企業、大使館等の取引総数は4,000件以上。英語対応の営業員が住まいのみならず、日本での生活も含めたサポートを行っており、これは他ではなかなかできないこと。

高級物件、外国人向け物件では設備ひとつでも一般的な物件と異なり、こうしたものを適切に管理していくには専門の知識と経験が必要になります。」

これらの物件の多くでは汎用品ではなく、特殊な外国製の家電などが使われています。そのため、部品ひとつでもメーカーごとに指定の専門事業者から入れることになり、知識、協力関係がないと修理、交換はスムーズに行えません。

「管理部では入居者様向けのカスタマーサービスセンターも自社運用で直接対応をしています。その中で各業者と業務提携しているのはもちろん、部品も一定数キープしてもらっているので修理、交換はスムーズに行えます。また、カスタマーサービスセンターには外国人チームがいて、英語での説明や故障の相談を受けることが自前で可能ですし、巡回サービスという修理専用のサービスカーが都心部を毎日走っており、その場で対応可能な修繕は無償対応で直してしまいます。各種英語版取扱説明書の保管、リモコンや設置機器類の英語表記など外国人入居に対応した準備も徹底して行っています。」

迅速に対応できる管理が満足いく暮らしに繋がるためでしょう、契約者の約5割がリピーターまたはお客様からのご紹介になっているのも特徴。そうした信頼関係が優良な貸主を集めることに繋がっており、賃料滞納のリスクが0.1%ほどと低い点も知っていただきたい点です。

カスタマーサービスセンターのイメージ写真

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港区内の賃料相場は20%以上アップ
立地が良ければ築年数は気にならない時代に

創業から50年以上高級賃貸を中心に扱ってきた中で、現在気になっているのは物件の老朽化と田邊さん。

「2000年以降のマンションは2000年後半から増えたタワーマンションなども含め、外観、室内はさほど築浅物件と遜色ない状態です。ですが、設備は持ちません。使い方によっては15年ほど持つこともありますが、20年は稀です。営業はまだ持つと判断してそのまま貸そうとしますが、少しでも不安がある場合は管理からストップをかけ、新しくするように説明・提案しています。

それ以外でも、特に都心部の物件が老朽化していても、古いから仕方ないと安い賃料で貸されている例があるのは実にもったいない話です。」

というのは、現在の都心部のマーケットでは立地が最優先されており、きちんと手が入っていれば築年は問わないという傾向が強まっているため。

「2000年以降に建てられた物件なら、共用部分やフロントサービス等の差を除けば2010年築でも、2020年築でも室内の状態が整っていれば賃料はさほど変わりません。場所が良ければ古くても高収益を目指せるようになっているのですが、それに気づかれていないオーナー様が少なからずいらっしゃるようです。」

さらに古い1980年代の建物でも、古びた水回りを改修し、入居者に選ばれるような高品質なリノベーションを施せば、今までの1.5倍くらいで貸せるといいます。これまで50万円で貸していたものが75万円、90万円で貸せるとなったらどうでしょう。

「2012年から今までで、港区では賃料相場が23~24%ほど上がっています。売却もしやすくなっていますし、貸すにも有利。フルリノベーションとなるとそれなりの費用をかける必要はありますが、賃料が1.5倍になるならだいたい5~7年ほどで費用回収が見込めます。また、ただ賃料だけを上げるのではなく、一度きちんと手を入れて質を高めておけば、長くその賃料で貸せます。特に古い物件の多い麻布、赤坂、青山エリアなどのオーナー様は運営方法を見直してみても良いのではないでしょうか。」

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新築物件が減少している首都圏近郊では
低層物件、一戸建てにも勝機

立地の有利さを利用していただきたいのは都心部だけではありません。

「このところ、建築費の高騰などで都心部以外では新築物件が減っています。そのため、都心部の少し外側、自由が丘や田園調布など人気の高いエリアでは、入居希望者のニーズに応えられない状態です。低層マンション、一戸建てなど手を入れれば高く貸せる物件はあります。古くなったら安くなる物件に甘んじているのではなく、ニーズに合わせた手を入れ、古くても賃料が高く、選ばれる物件に変えていくのが得策です。」

ただし、このエリアで求められるのはファミリー向けの広さと間取りの物件。例えば同じ面積でも都心部では2LDK、世田谷区や文京区では3LDKにするなどエリアによる間取り選定も選ばれるポイントです。

ちなみに田邊さんがお勧めするリノベーションのタイミングは築25年~30年の間。いつ空室になるかにも左右されるものの、30年経つ前にキッチン、水回りには手を入れたいといいます。

「古いままにすると1ランク下の物件と比べられてしまい、賃料が下ぶれします。今はリノベーション物件は市民権を得ています。特に賃貸では住んでいる期間、室内がきれいなら良しと考える方が多いので、リノベーションは効果的です。築25年~30年はちょうど2回目の設備交換の時期にも重なるので、まるっとフルリノベーションするのに良いタイミングです。」

市場動向ではもうひとつ、人件費の高騰も経営に影響を及ぼします。高額賃貸ではフロント、コンシェルジュ、掃除など人が関わる部分が多く、24時間スタッフが常駐していることで選ばれている例もあります。

「人件費を上げて欲しいという要望もあれば、この費用では継続できないので管理を辞めますなどという話を聞くようになりました。確かに人件費増は賃貸経営には負担になりますが、高額であればあるほど人が関わる部分が多く、その点が評価され、選ばれているというところがあります。それを考えると人件費は差別化のために必要な経費とも言えます。もちろん、必要のないものはカットすべきでしょうが、それが魅力になっているのであれば家賃が上がっている分、コストとして考えていただきたいところです。」

低層物件

管理のデジタル化、IT活用とより良いサービスの模索

世の中ではデジタル化が進んでいますが、管理には人が絡むことが多いため、敢えて未だにアナログで対応している部分もあります。たとえばオーナー様には毎月、管理状況などをお伝えする月次報告書をお送りしていますが、現時点では郵送という手段を続けています。

「大手の管理会社では、クラウドにアップするのでそれを見てくださいというやり方も増えています。実際にはデータで送って欲しいという方がいる一方で、やはり紙でという方も少なくありません。そこで当社では現時点では月に2回、封書(レター)をお届けしています。

その冒頭には、私が毎月挨拶文を書いています。季節の挨拶のほか、設備のトレンドや季節ごとの注意点、不動産情報、会社のトピックといった設備、不動産経営に関するような内容が中心です。内容によってはオーナー様からご連絡をいただき情報を元にご指示いただくことがありますが、大変ありがたいです。」

この目的の一つは、設備が入居中に故障することを避けるため。賃貸経営の長期的な成功のためには、入居者様に満足して住んでいただくことが大事ですが、そのためには入居中に設備が故障することは避けたいところ。入居中の工事は経費的に高くつきますし、日程調整等すぐに工事できないことになったり、入居者様には楽しくない経験になります。それを防ぐためには予防更新として設備を交換し、安心して住んでいただけるようにすること。募集条件や成約スピードへの好循環にも繋がります。そのためにも毎月の挨拶文での情報提供は重要なツールと考えています。

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「世の中の流れに合わせて単純にデジタル化、IT活用を進めるのではなく、まずはより良いサービス、期待されるものは何かを考え、その上で変化していこうという考えです。今年は25年振りに賃貸管理システムの変更を行いました。数年前より準備しようやく今年の夏に新システムでの運用が開始したところです。これは今後のサービス対応に必要不可欠なもので、これにより様々なDXの選択肢が検討できるようになります。今後も新しい技術の導入は大きなテーマでありますが、どのような変化であっても、常にオーナー様、入居者様に寄り添ったホスピタリティを第一に、より良いサービスを提供できるよう努めて参ります。日々進化、深化するケン・コーポレーションの住宅運営管理部に今後もご期待ください。」

【取材協力】住宅運営管理部

【文・構成】中川 寛子 HIROKO NAKAGAWA

(株)東京情報堂代表。街選びのプロとして首都圏のほとんどの街を踏破した、住まいと街の解説者。早稲田大学教育学部で地理・歴史を学び、卒業後は東洋経済、ホームプレス、東京人その他の紙、ウェブ媒体で編集者、ライターとして記事、書籍等を手がけており、主な著書に「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)、「解決!空き家問題」「東京格差」(ちくま新書)その他著書、かかわった本多数。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。宅地建物取引士、行政書士有資格者。

掲載中の施設名・駅名・社員の所属などの情報は2025年9月現在のものです。