Story Vol.6 時代と共に進化、より住みやすく
湾岸の歴史とこれから(後編)

湾岸の各エリアの概況をまとめた前編(Vol.5)はこちら

街ごとに異なる発展を遂げてきた湾岸エリアですが、今後さらに変化が期待できます。そのうちなんといっても大きいのは東京五輪の影響。またこれまで動きが無かった地域に大規模な開発計画も出ています。ここでは湾岸のこれからを見ていきましょう。

晴海

芝浦から選手村予定地である晴海方面を見たところ。現在は晴海客船ターミナル、晴海ふ頭公園しかないが、今後は大きく変わる(2017年撮影)

東京五輪で変わるのは晴海だけではない

東京五輪では有明エリアにテニスやトライアスロン、フェンシングその他の競技会場、そして晴海には選手村建設が予定されています。このうち、住宅絡みで大きな話題になっているのは東京五輪後に民間が分譲・賃貸することになる選手村。現在の予定では大会終了後に建設される予定の超高層2棟、商業棟を含み全部で25棟、約6000戸が供給されることになるとか。

大会終了後の住宅棟モデルプラン

選手村跡地では防災はもちろん、環境、子育て、交通その他に配慮、多様な人たちの居住を意識した街づくりが予定されている
東京都オリンピック・パラリンピック準備局「大会終了後の住宅棟モデルプラン」より引用

23区で1年間に供給される新築マンションの3割前後という数だけに、供給バランスや価格その他を懸念・指摘する向きもありますが、湾岸の居住人口が増えるであろうことは間違いありません。それが商業施設その他の生活利便施設増や足回りの利便性アップなどに繋がるなら歓迎したいところです。

東京五輪でもうひとつ変化が期待されているのは勝どきエリア。築地市場移転が凍結されている状況下で環状2号線建設もストップしていますが、これが完成すると勝どき~虎ノ門間は車で5分ほど。大幅に利便性がアップすることになり、となると勝どきはおろか、西側の倉庫街である豊海辺りにも変化が及ぶ可能性もあります。

「リオデジャネイロ・ロンドンと近年オリンピックを開催した都市は、その後経済的に大きな成長を遂げています。東京にもそうあって欲しいところ。さらに東京五輪後に競技会場などをてこに湾岸エリアにも注目が集まることを期待したいものです」(ケン・コーポレーション湾岸支店支店長・田邊高明氏)

有明に1500戸強のトリプルタワー建設計画

有明

有明コロシアム周辺と開発予定地(写真奥)。周辺には有明テニスの森公園、東京臨海防災公園、プロムナード公園など公園も多く、住環境に恵まれている(撮影2013年)

今後の開発計画のうちで最大規模となるのは有明テニスの森公園隣地に2020年春完成が予定されている地上33階建て3棟の「(仮称)東京ベイ トリプルタワープロジェクト」。1500戸強の分譲住宅のほか、保育施設・店舗などの誘致が計画されており、加えて住宅建設地に向かい合う区画には大型商業施設、ホテル・イベントホール・駐車場などを建設する予定も。一帯すべてが完成するのは2026年と少し先になりそうですが、大きく風景が変わる計画であることは間違いありません。

「有明ではスーパーが1店舗、コンビニがいくつかある程度で、飲食店は東京ビッグサイト周辺まで歩かないとない状態でした。そこに大型商業施設を含む施設ができるとなると、利便性は非常に高まり、地域全体が見直されることになるのではないでしょうか」(前出・田邊氏)

「今後で期待できる大型物件としては2019年完成予定の晴海のパークタワー晴海、2022年完成予定の芝浦二丁目計画など。中央区では築地市場移転を受けてその東側で開発の気運が高まっており、少し離れた湊にはパークシティ中央湊 ザ シティが2017年冬に完成予定です。また、月島でも防災がらみで4~5カ所建設が行われていますが、こちらは既存物件に比べると小規模なものが中心です」(前出・田邊氏)

また、これからの新築ではないものの、2017年1月から入居が始まった KACHIDOKI THE TOWER(勝どき ザ・タワー) の人気が高い点も紹介しておきたい。勝どきでは THE TOKYO TOWERS(ザ トウキョウ タワーズ) 以来8年ぶりの新築とあり、期待があったのだろう、総戸数1420戸中200戸の賃貸募集住戸に申込みが殺到しているのである。「内見した人のうち半数が申し込む状況で予想以上です」(前出・田邊氏)

KACHIDOKI THE TOWER

拡大表示

KACHIDOKI THE TOWER 外観。最寄り駅の大江戸線勝どき駅では混雑緩和のための工事が進められており、今後、環状2号線が開通することも考えると、勝どきの利便性は高まる一方だ

URから民間に転貸された大川端リバーシティ21にも注目

リバーシティ21 新川」 28階から佃方面を望む。東京湾岸を代表する風景のひとつ(2017年撮影)

湾岸でもうひとつ、大きな話題は 大川端リバーシティ21(以下リバーシティ21) の再生です。リバーシティ21は都心回帰促進を図るために1988年に始まった佃の石川島播磨重工業(現・IHI)の工場跡地の再開発で、住宅・都市整備公団(現・都市再生機構=UR)、東京都住宅局、東京都住宅供給公社、三井不動産によって進められた、石川島播磨重工業(現・IHI)跡地の再開発事業。8棟のタワーを含む大規模な住宅地として開発され、高さやデザインを少しずつ変えつつも、全体として統一された外観は評価が高く、隅田川、桜、超高層を取り込んだ風景は都心を代表する風景のひとつと言っても良いほど。佃の歴史ある街並みとの対比も絵になるところです。

そのリバーシティ21のうち、URが所有するイーストタワーズ(タワー1棟を含む4棟)、イーストタワーズⅡ、対岸にあるリバーシティ21新川が2016年10月、民間にサブリースされました。これは2013年に閣議決定された「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」に基づいて、URが所有する都心部の高額賃貸住宅約1万3000戸の運営を順次民間事業者に委ねるというもの。2015年から少しずつ行われてきましたが、規模といい、立地といい、リバーシティ21がこれまでで最大です。

リバーシティ21の配置図

拡大表示

リバーシティ21の配置図。青い部分が民間にサブリースされた建物。図面だけ見ても、全体にゆったりとした配棟計画で建てられていることが分かる

リバーシティ21 イーストタワーズ 10号棟 15階モデルルーム

リバーシティ21 イーストタワーズ 10号棟」15階モデルルーム。民間の手が入ることによって現代のニーズにあった改装が行われている

「東京駅までバスで10分ほどという立地、隅田川に臨む桜並木の遊歩道、ゆったりした敷地や成熟した街並みなどもあり、また、天井高4mもある部屋や二世帯近居ができる離れのある部屋など個性的な間取りも豊富に揃っているのですが、これまであまりPRされてこず、忘れられた存在になってしまっていました。全体では300戸ほどの空室もあり、まずは稼働率を上げようと、UR時代より賃料を下げて募集を始めました」(前出・田邊氏)
坪(3.3㎡)単価で1000円、2000円下がっている部屋、賃料では2~3万円下がっている部屋などもあるそうで、借りたい人にはメリット大。立地、環境は申し分ないので、稼働率が上がることで適切なリノベーションや設備交換が行われていけば、もう一度注目が集まることでしょう。誕生時から見続けてきた私としても再発見されるとすればうれしい限り。特に桜の時期に現地を訪れれば魅了されること、間違いありません。

【文・構成】中川 寛子 HIROKO NAKAGAWA

借りる、買う、貸す、建てるなど、住まいに関する雑誌、書籍、インターネットなどの編集に携わること20数年。長らく表参道に暮らし、都心居住の快適さを身をもって実感している。All About「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。

住宅賃貸仲介のスペシャリスト
田邊高明 TAKAAKI TANABE
【自己PR】

日々進化し続ける湾岸エリアを網羅しKENの優良物件をご紹介致します。
営業員全員でお客様がご満足いただける物件とおもてなしを提供致します。

  • ■趣味:釣り・野球・ゴルフ
  • ■出身:習志野市
  • ■資格:宅地建物取引士・相続診断士

掲載中の物件名・プロジェクト名・駅名・社員の所属などの情報は2017年4月現在のものです。